タングステン電極とは
銀灰色のとても硬く重量のあるクロム族元素に属する金属がタングステンです。
希少金属のひとつとしても挙げられ、金属の中では最も融点が高く、金属としては比較的大きな電気抵抗を持つ事から、LEDが普及する前は主に電球のフィラメントとして利用されてきました。
タングステンの産出量は、世界の中でも中華人民共和国がトップクラスで約52,000トンの産出量を誇ります。
中国の次にロシア連邦、カナダ、オーストリアなどから多く産出されています。
現在は主に電子顕微鏡や電子線描画装置の電子ビームの発生元、切削工具などに用いられる超硬合金や、アクセサリーの原材料、鉄と合金によってドリルなどの高速度鋼にも使われており、幅広い用途のある金属です。
特にTIG溶接の非消耗電極の素材としてだけではなく、プラズマアーク溶接であったりプラズマ切断の電極であったりと利用用途は多く、その際に使用されるのがタングステン電極です。
タングステン単体を電極として使用すると、温度が高くなるにつれ徐々に先端は溶融し始め、形状が変化してしまいます。
これを防ぐ為に電極先端部の温度を低く保つ働きを持つセリウム、ランタニウム、ジルコニウムなどの酸化物がタングステン電極には添加されています。
これにより、先端の溶解を防止するのと、長時間元の形状を保つ事が可能になっています。
なお、添加する酸化物のひとつとして用いられるナトリウムは、微量の放射性物質を含んでいる為、タングステン電極を目的としてタングステンへ添加することは避けられる傾向にあります。
そして、添加される酸化物がスムーズに移動、蒸発消失される為に、添加するタングステンの粒は細かく、均一でなければいけません。
その為には、良質なタングステン及び酸化物を使用する必要があります。
タングステンと酸化物の質は、タングステン電極のアークスタート性やアーク安定性の他、寿命や耐久性にも影響を与えるので、メーカーの仕様書などを良く確認する必要があります。